解説

『上海ドラゴン 英雄拳』が予想外に大ヒットを記録し、スタッフ、キャストを前作と同じ顔ぶれで急遽製作された続編的作品だが、登場するキャラクターたちは前作とはまったく違うものとなっている。主演は、『嵐を呼ぶドラゴン』のチェン・クアンタイ、ヒロインには『マジック・ブレード』のチン・リーと、『上海ドラゴン 英雄拳』で一躍人気スターとなった二人が、再びコンビを組み、上海の暗黒街をのし上がろうとする仇連環(チョウ・リエンファン)という一人の男の壮絶なる復讐の戦いを描いている。前作よりも残虐で激しいクンフーアクションが描かれ、全体的に当時流行っていたフランス映画のノワール
を感じさせる作品となっている。監督は『上海ドラゴン 英雄拳』にひき続き、巨匠チャン・チェとパオ・シュエリーの共同演出。武術指導には、『片腕必殺剣』シリーズ等のチャン・チェ作品でおなじみのラウ・カーリョンが担当している。

ストーリー

上海に名を残し、「青蓮閣」で壮絶な死を遂げたマー・ヨンチェンという勇敢な男の死から20年後。その男と同様に、上海で一旗あげようと暗黒街に身を置くチョウ・リエンファン(チェン・クアンタイ)という男がいた。彼はある時、裏社会の大ボス・ユィの息子のシャオカイ(ティエン・チン)とポーカーの賭けに勝った時、シャオカイの愛人のチェン・チィファン(チン・リー)に心奪われてしまう。愛人の前で面子を潰されたシャオカイは、父親にチョウを潰すことを頼んで、チョウが留守の家へ子分たちを連れて、仲間のリンたちを痛めつけるが、家に帰ってきたチョウは、怒ってシャオカイを捕まえ、首根っこをつかんでユィのもとに向かう。おとし前をつけたチョウは晴れてチィファンを自分のものにする。これをきっかけにユィ一派に命を狙われるチョウは、ユィ親子と親しいボスのひとりケンパオの放った子分たちに襲われ、怪我を負う。チィファンに助けられたチョウが彼女の家で身を隠している間、ケンパオの裏切りで、ユィ親子は殺害され、チョウの親友リンも腹を裂かれて殺される。回復したチョウは、復讐のためにつきあいのある親分たちに助けを求めるが、すでにケンパオの手が回っていた。チョウはひとり復讐のために、敵の待つ「青蓮閣」に向かった。

日本の任侠映画にも通じる、独特の男の世界

『上海ドラゴン 英雄拳』が大ヒットしたが、主人公の馬永貞は壮絶な最期をとげたから、続篇はつくれない。では、同じスタッフ、キャストで、上海暗黒街ものをもう1本、ということで生まれた姉妹篇。日本の任侠映画にも通じる、独特の男の世界のなかで、意地をつらぬきとおすチェン・クアンタイの魅力が、またかがやく。

圧倒的な多勢を相手にまわし、彼がひとりでたたかいぬく大きな見せ場が二つあり、どちらも見ていて、ついちからがはいる。前作『上海ドラゴン 英雄拳』の、あの恐怖の手斧攻撃(チャウ・シンチーの『カンフーハッスル』でもオマージュをささげられている)に対し、こちらは、まず警棒ぐらいの短い棒による攻撃(主人公に棒をうばいとられないような工夫をしているのが、いい)。そして、最後の見せ場では、ひところ、映画ではなく現実の日本の少年犯罪シーンで、しばしば報じられて有名になった、フィリピンのバタフライ・ナイフ、あれを大型化したような、おそろしい刃物がつかわれる。このギャングは「薄刀党」とよばれる。上海の通りや路地が血に染まり、主人公のはらわたが飛び出す、チャン・チェ監督ならではの悽絶なクライマックスだ。

前作では淡いものだった、ヒロインとの恋が、こちらではグッと濃厚。ベッド・シーンさえある。チン・リーは、この翌年の『ブラッド・ブラザース/刺馬』(73)でも、ティ・ロンと濃密な愛をかわしているが、男ばかりのチャン・チェ世界のなかで、男女の恋情を熱く表現できる貴重な女優だ。

宇田川幸洋(映画評論家)

2006年9月6日発売!

復讐ドラゴン 必殺拳

仇連環
Man Of Iron

1972年香港
監督:チャン・チェ、パオ・シュエリー
出演:チェン・クアンタイ、チン・リー
特典:オリジナル劇場予告編、フィルムギャラリー
KIBF2555/COLOR/本編95分/片面1層/16:9LBスコープサイズ/音声1:北京語(モノラル)/字幕1:日本語