
実在した上海の英雄としてその名が知られる馬永貞(マー・ヨンチェン)。これまでもジミー・ウォング主演で『ドラゴン覇王拳』が、金城武主演で『暗黒街 若き英雄伝説』が製作されたが、そのきっかけとなった元祖ともいうべき作品の登場である。チャウ・シンチー主演『カンフー・ハッスル』でも、舞台の上海、そして斧を持つマフィアといった設定は、本作からの元ネタでもあり、香港アクション映画の代表作の一本として根強い人気がある。監督は、ショウ・ブラザースのアクション映画の基礎を作り上げた『片腕必殺剣』『ヴェンジェンス/報仇』等の巨匠チャン・チェと、撮影カメラマン出身のパオ・シュエリーが共同演出。出演は、『嵐を呼ぶドラゴン』のチェン・クアンタイ、『マジック・ブレード』のチン・リー、『英雄十三傑』のクー・フェン、そして特別出演として『新・片腕必殺剣』のデビッド・チャンが重要な役で登場している。

マー・ヨンチェン(チェン・クアンタイ)は、山東から一旗あげようと上海へやってきたが、なかなか職につけず、海運労働者として働いていた。あるとき、止まっている馬車を磨いて金を得ようとするが、御者ともめているところへ、馬車の持ち主である上海の大物のひとり、タン・スー(デビッド・チャン)と出会う。彼と出会ったことで、いつかはタン・スーと同じようになりたいと思ったマーは、たまたま行ったタン・スーの縄張りである酒場が、タンと敵対する斧頭党に執拗なみかじめ料の取立にあっているのを見かねて追い払ったことをきっかけに、タンから縄張りとしてその店を受け継ぐこととなる。そして次に勢力拡大のために、斧頭党が仕切る賭博場にマーはひとりで乗り込み、力ずくで奪ったのだった。人にも情けをかけ、次第にその名が知られるマーのことを快く思わない斧頭党以下、四大天王と呼ばれる部下をもつ大ボスのヤン(チアン・ナン)は、上海を自分のものにするべく、罠を仕掛けて、まずタン・スーを殺害する。それを知ったマーは、復讐するべくヤンたちがいる「青蓮閣」へ乗り込んだ。だが、そこにはヤン以下、彼の配下の全員が待ち伏せしていたのだった・・・。

香港映画やテレビシリーズには、上海を舞台にした作品が数多くある。テレビシリーズでいえば、チョウ・ユンファ主演で彼が人気スターとなった「上海灘」などがあるが、映画において大ヒットした上海ものといえば、原点とも言うべき『上海ドラゴン 英雄拳』になる。この大ヒットの影響は、ショウ・ブラザースが急遽、同じスタッフ・キャストで『復讐ドラゴン必殺拳』を製作し、またジミー・ウォング主演で同じ馬永貞ものとして『ドラゴン覇王拳』が製作されるなど、上海を舞台にした作品は人気を博したのだった。1990年代に入ると、ショウ・ブラザースの系列会社によって『上海ドラゴン 英雄拳』のリメイクである『暗黒街 若き英雄の伝説』が金城武主演で作られ、上海の背景や小道具をネタの一つとして使ったチャウ・シンチー主演の『カンフーハッスル』等、今なお、影響を与え続けている。この傑作を作り上げたのが、ショウ・ブラザースで男性路線を突き進んだチャン・チェ監督であった。彼は70年代に入ると、ショウ・ブラザースの中でも最も影響力を持った監督となって数々のヒットを飛ばしていたが、作品によっては自らの名前を前面に出ながらも、実は現場で指揮する監督が違うという、今では香港で当たり前となっている執行導演のシステムを作った監督でもある。彼の持ち味と現場を指揮したパオ・シュエリーの演出は見事にコラボレートされ、ロシア人レスラーとの対決や、四大天王との対決、斧という小道具を使った見せ方など、ショウ・ブラザース・アクションにおけるストーリー展開とアクションの見せ場を進化させたのであった。またこの頃は、ゴールデンハーベスト社のブルース・リーが登場したこともあり、そういったことが相乗効果となって、アクションを新たな道へ向けさせたといっても過言ではない。
筒井修(映画宣伝プロデューサー)
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