
台湾でチャン・チェ作品の武術指導者として活躍していたラウ・カーリョンが、香港に戻って初めてメガホンを持った作品が、『マジッククンフー神打拳』である。清末時代に義和団が駆使した法術・神打を題材に、香港映画にクンフーとコメディー性を融合させた作品を初めて描き、その後の香港クンフー映画に影響を与えた作品でもある。
主演は、本作品でスターとなった『霊幻少林拳』のワン・ユー。共演は、 リン・チェンチー、チアン・ヤン、リー・ホイサンといった顔ぶれ。 本作の冒頭では義和団拳士に扮したティ・ロン、チェン・クアンタイ、ウィルソン・タンといったスターたちが顔を見せているが、これは監督との交友から実現している。また、 端役で若き日のエリック・ツァン、ラム・チェンインの姿を見ることができる。

清の末期。神打法術の達人チー・チアン(チアン・ヤン)とその弟子シャオ・チェン(ワン・ユー)は、祈祷のために町へ来ていたが、酔っ払ったチー師匠が警察に拘束されてしまったために、シャオが代わりに神打の儀式を引き受ける羽目になる。何とかその場を切り抜けたシャオは、町の実力者リウ(シー・チュンティエン)の手下に言いがかりをつけられているところを、一瞬、男に見間違えた可憐な女性チンリエン(リン・チェンチー)に助けられる。二人は、これをきっかけにコンビを組んで、神打の名を使って幽霊騒動を解決する。さらにシャオは、悪辣なリウ一家が、借金を盾に町人たちを虐げているのに怒り、神打を使ってリウの家に乗り込み、町人たちを助け、リウたちを煙に巻いた。町人たちに信頼を得たシャオは、彼らにクンフーを教える。だが、リウは凶悪な強盗犯で武術の達人シェン(リー・ホイサン)とチャオ(ウー・ハンチェン)から、神打のカラクリを知らされ激怒し、シェンたちをシャオと対決させる。神打の技が使えなくなったシャオは絶対絶命に陥った…

チャン・チェ監督作品の武術指導として活躍してきたラウ・カーリョンが、ついに監督としてデビューした記念すべき作品である。
演出に、ややチャン・チェ的な色のなごりが見られるのが興味ぶかい。特に冒頭、「神打」とは何かを説明する清朝末期のシーン。ティ・ロンとチェン・クアンタイというチャン・チェ作品のスター二人が特別出演しているためもあるだろうが、刀剣にも銃弾にも傷つかない秘術「神打」の御前(西太后のまえ)での実演の、悲愴なまでの緊迫感は、チャン・チェ的である。このシーンだけ見ると、神打は真実のもののようであるが、しかし、それからあとの本筋を見てから、見なおすならば、このシーンは両義的に演出されていることがわかるだろう。
本筋は、中華民国7年(1918年)。ワン・ユー演じる主人公の青年は、師匠とともに神打に見せかけたトリックをつかうインチキ祈祷でかせいでいる。だが、師匠にはぐれて一人になった彼が、このインチキの技を善用して人をたすけていく。さらに、インチキではあっても、それをおこなうには、それなりのクンフーの修練が必要なので、実は彼にはホンモノの武術も身についていたのだった、というアイロニーが、ドラマとしてのすばらしいおもしろみを生んでいる。ここからクンフー・コメディーというジャンルは出発した。ちなみに、ラウ・カーリョンは『秘技・十八武芸拳法』(82)で「神打」を明確に否定している。
宇田川幸洋(映画評論家)
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