解説

クンフー映画の巨匠ラウ・カーリョンが、父より教わった武術・洪家拳の開祖といわれる南少林の英雄のひとり、洪熙官[ホン・シークァン]を描いたクンフー・アクション作品である。本作では、宿敵・ 白眉道人[パイ・メイ]との壮絶な死闘が描かれているが、この仇役のキャラクターこそ、あのクエンティン・タランティーノ監督の 『キル・ビルVol.2』に登場したパイ・メイの原形であり、世界的にも有名になった悪役キャラクターである。またラウ監督の代表作の一本に数えられているほど、評価の高い作品である。

主演は、『嵐を呼ぶドラゴン』等、洪熙官役で有名なチェン・クアンタイ、『キングボクサー大逆転』のロー・リエ、『霊幻少林拳』のワン・ユー、そして『少林寺三十六房』のリュー・チャーフィーといったお馴染みの面々が顔を揃えている。

ストーリー

清朝は漢民族の抵抗勢力である少林寺を焼き打ちにして、僧とその在家信者たちを殺害しようとしたが、洪熙官[ホン・シークァン](チェン・クアンタイ)は逃げ延び、生き残った仲間たちは劇団員になりすまして、南の広東へ逃げていた。その途中、旅芸人で鶴形拳の使い手である方詠春[ファン・ユンチュン](リリー・リー)と出会ったシークァンは、彼女にひかれ、結婚して一人息子の文定[ウェンティン]が生まれる。、シークァンは師を殺害した白眉[パイ・メイ]道人(ロー・リエ)を倒すために、虎形拳をみがいていた。だが、虎形拳だけでは倒せないことを知るユンチュンは、シークァンに鶴形拳を学ぶことを諭すが、受け入れようとはしない。ついに白眉道人の居場所を知ったシークァンは、白眉道人に対決を挑んだが、技を見切られ完敗してしまう。だが、弱点を知ったシークァンは、それから10年をかけて技を極める特訓を開始した。息子のウェンティン(ワン・ユー)も大きくなり、妻を息子に託したシークァンは、再度、白眉道人と闘うが、命を落としてしまう。それを知ったウェンティンは、仇を取るために、母から学んだ鶴形拳と父が残した虎形拳の教本で、虎鶴双形拳の特訓を開始した!

洪家拳への熱き思いを描くラウ・カーリョン

ラウ・カーリョン監督の『少林虎鶴拳』の原題は「洪熙官」、そう『嵐を呼ぶドラゴン』で登場して以来、南少林のクンフー英雄として登場してきたキャラクター名である。洪熙官[ホン・シークァン]が開祖と言われている洪家拳は、ラウ監督にとっては自らが学んだ武術であり、これまで撮ってきた作品のクンフー・アクションのベースとなっている。そのルーツを描いた本作は、監督自身の武術の歴史をスクリーンに再現した内容として非常に興味深い。夫婦愛、親子愛、そしてクンフーの特訓や対決シーンで繰り出される技についての説明等、これらは全てラウ監督が思うところの武術に対しての心構えや考え方である。これまでのクンフー映画になかったこれらの精神を描くことで、クンフーの意味を観客に問いかけているということでは、まさに他のクンフー映画とは違うのである。それは、映画そのものが、武術の生きた教材ともいえるからである。まず、かならずといっていいほど登場するのが、洪家拳にとって最も重要な基礎訓練である“馬歩”である。本作では、妻となる方詠春[ファン・ユンチュン]と息子の文定[ウェンティン]のシーンで登場するが、下半身を強化するこの“馬歩”を描くことで、武術の基本の大切さを我々に教えているのだ。洪家拳への熱い思いを描いたラウ作品こそ、本物の武術映画なのである。

倉田緑朗(香港映画アナリスト)

2006年7月5日発売!

少林虎鶴拳

洪熙官
Executioners From Shaolin

1978年香港
監督:ラウ・カーリョン
出演:チェン・クアンタイ、ワン・ユー
特典:オリジナル劇場予告編、フィルムギャラリー
KIBF2550/COLOR/本編96分/片面1層/16:9LBスコープサイズ/音声1:北京語(モノラル)/字幕1:日本語