
世界的にも人気の高いラウ・カーリョン監督のクンフー映画のなかでも、評価の高い1本である。通常は1対1ないしは1対複数という組み手アクションだが、二人のコンビネーションで敵と戦うという新たなアクションが展開されている。また、ウエスタン・テイストと『子連れ狼』をモチーフとしたようなシーンもあるなど、アクションの最高技を全篇に渡り見せつけている。主役の二人には、これと同じ年に製作された前作『霊幻少林拳』でも共演したワン・ユーとリュー・チャーフィー。共演には、『キングボクサー大逆転』のロー・リエ、『ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳 武館激闘』のワン・ロンウェイ。そしてラウ家班の俳優として有名なベティ・ウェイとシャオ・ホウも顔を見せている。

広東地方を荒らしている泥棒ホー(ワン・ユー)は、料亭で盗んだ宝石で豪遊しているときに、北京から来たという宝石商人ワン(リュー・チャーフィー)に芸妓たちを独占される。怒ったホーはケンカをふっかけるが、役人たちが宝石泥棒逮捕に現われて逮捕されそうになったところで、ワンが役人にそっと身分をあかして、ホーは逮捕を免れる。ワンは実は清の康熙帝の11番目の皇子だった。酒と美術品と武術を愛する第十一皇子は、身分を隠して広東に来ていたのだった。それを知った第四皇子は、皇位継承権者を一人でも減らそうと、リアン将軍(ロー・リエ)に命じて、第十一皇子に刺客を送る。一方、ホーを更正させたいと思ったワンは策を計り、ホーを無理やり弟子にする。最初はいやがったホーだが、刺客と闘っているワンを見て相当な武術の使い手であることを知り、左腿を負傷した彼を救ったことをきっかけに本当の弟子となる。鍛練をつみ、奥儀を身につけて護衛となったホーは、皇帝の皇位継承指名日に間に合うよう、車椅子にのせた皇子をのせ、北京へ向かう。だが、それを阻止しようと将軍が送った刺客たちが、彼らの行く手に待ち構えていた。

ラウ・カーリョン監督作『少林皇帝拳』(79)は、劉家班総出演による香港クンフー映画の佳作だが、映画の中で特に印象的なシーンが、中盤での京城の富豪・王親勤(リュー・チャーフィー)と2人の刺客(ワン・ロンウェイ&シャオ・ホウ)が利き酒の場で、表面上は互いに笑顔で杯を交わす振りをしながら、実は相手の隙を狙い喉や胸を突かんとするトリッキーなアクション・シーンだ。登場人物たちが平静を装った会話を交わしながら、激しく拳や蹴りを打ち合う、というアクション構成は香港クンフー映画の定番であり、『少林皇帝拳』の香港公開一ヶ月前に公開されたユエン・ウーピン監督作『南北酔拳』(79)でも、ユエン・シャオティエン演じる蘇乞児とウォン・チェンリー演じる千酔翁が、テーブルの上では杯を交わし合いながらも、その下では激しく蹴り合い火花を散らす、という『〜皇帝拳』と似たアクション・シークエンスが見られた。ラウ・カーリョンとユエン・ウーピンと言えば、カーリョン監督作『少林寺vs忍者』(78)において、カーリョンが劇中で披露した酔拳の演武シーンをセットの傍らでウーピンが見て、それを自身の監督作『ドランク・モンキー酔拳』(78)のジャッキー・チェンが披露した酔八仙拳の発案に繋がったとの説も興味深い。南派と北派、双方の“功夫マスター”による偶然が生んだ“酔拳競演”であった。
知野二郎(香港功夫映画評論家)
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