
南派少林拳の伝承者であり、アクション映画の監督として香港に一大旋風を巻き起こしたラウ・カーリョンのクンフー・アクションが冴える1本。個性的な動きをする螳螂[かまきり]から生み出された拳法をモチーフにした復讐クンフー・アクションの主役を演じるのは、『少林寺列伝』等、チャン・チェ作品の主演スターであり、ラウ監督の弟子のひとりでもあるデビッド・チャン。リュー・チャーフィー、ラウ・カーウィン等、本物を追求するラウ監督の演出を理解するラウ組の面々とともに、新たなクンフー・アクションを作りあげた。また、 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』の撮影監督アーサー・ウォンが、壁に投影した影で闘いを表現するなどのラウ監督の新たな表現を、見事にサポートしている。

清の康熙帝に仕える文官の父を持ち、文武両道に長けるウェイ・ファン(デビッド・チャン)は、 皇帝から反清復明のティエン家の動きを探るよう命じられる。期限までに戻ってこなければ親族一同は死罪になる。ファンは、ティエン家の一人娘チーチー(セシリア・ウォン)の家庭教師として潜り込む。だが、ある日の夜、内情を探っている最中に見つかり、ティエン家の定めにより殺されそうになるが、彼を好きなチーチーが家主(ラウ・カーウィン)を説得して結婚を条件に難を逃れる。だが、早く戻らなければウェイ一族の命が危ない。ファンは国にいったん帰ることを訴えるが、それを許さないティエン家は、外へ通じる各部屋にティエン家の各人たちが待ち受け、彼らを倒さなければ先へ進めない。ファンはチーチーの手助けで家主のところまでにたどり着くが、その強さにかなわず、ファンを助けようとしたチーチーが一撃を受け、命を失ってしまう。逃げ延びたファンは、自分の身代わりに死んだ彼女のために復讐を決意。やがて目の前でかまきりが不思議な動きをする姿を見て、ある拳法を思いつく。

ラウ・カーリョン監督が映画作家でありながらも大きくこだわっていること、それは自らが武術の伝承者であり、映画のなかに本物の武術を取り入れて見せるという考え方にある。それを理解できなければ、彼の作品に関わるスタッフ、キャストたちはとってもきつい撮影現場になってしまう。
『激突!螳螂拳』は、これまでの正統派クンフーとは違った作品ではあるが、元は監督がインドネシアに行った際に見かけたカマキリの動きが映画化のヒントとなっている。もちろん、それを具象化したラウ監督の手腕は光るが、素晴しい映画本篇のアクション以上に面白いのが、映画告知の予告篇なのである。予告篇は通常、映画本篇の映像で作られるものがほとんどであり、予告篇のために俳優を動かして撮るなど考えられない。しかし、『激突!螳螂拳』の特典に収められたオリジナル予告篇は、その観念を覆えす予告篇になっている。まず、ラウ・カーリョン監督の螳螂拳についての説明から始まり、監督がカメラの前で力強く螳螂の型を演じる。そして、今度はデビッド・チャンが型を同じように演じ、ラウ・カーウィン、リリー・リー、セシリア・ウォンと出演者の面々が、映画で登場する拳や刀の技を言ってその型を演じるという、予告篇にはもったいない演舞が次々と行なわれるのである。映画の予告篇は観客に対しての宣伝でもあるが、このオリジナル予告篇を見るかぎり、ラウ・カーリョンの映画と武術に対する考え方がよくわかる。これはのちに武術映画の教科書となった『秘技・十八武芸拳法』に通じているともいえよう。
倉田緑朗(香港映画アナリスト)
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