
香港クンフー映画の巨匠であるラウ・カーリョン監督が生涯製作したなかで、唯一、女性を主人公にしたクンフー・アクション作品である。主演を演じたのは、伝統ある香港女性アクションスターのなかでも、美貌と抜群のスタイルで人気の高かったベティ・ウェイ。動きのしなやかさ、そしてお色気シーンまでも見せた彼女の演技は、第一回香港電影金像奨最優秀主演女優賞を受賞するなど、1980年代を代表する記念すべき作品の1本となっている。共演には、監督のカーリョン自らが出演し、『新・少林寺三十六房』のシャオ・ホウ、『ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳 武館激闘』のワン・ロンウェイ、そして『少林寺三十六房』のリュー・チャーフィーと、ラウ作品のおなじみの面々が顔を揃えている。

ユー家の当主ヤンサンは、病気で死期が近いことを知るが、弟のユー・ワイ(ワン・ロンウェイ)が遺産を狙っていることを知り、自分に尽くしてくれた使用人の娘チン・タイナン(ベティ・ウェイ)に頼んで結婚し、亡くなった後に甥のユー・チンチュン(ラウ・カーリョン)に相続させるために彼女を広東に向かわせた。そうとは知らないチンチュンは、叔母になるタイナンがあまりに若くてとまどってしまう。そして留学先の香港から戻ってきた息子タオ(シャオ・ホウ)も同年齢の彼女が大叔母であることが面白くない。叔母であることで威張るタイナンをぎゃふんと言わせようと、友人のジェームス(リュー・チャーフィー)たちと手を組んでダンスパーティーを開く。だが、彼女の持っている遺産相続書を狙ったユー・ワイの義息たちがパーティーで騒ぎを起こし、タイナンとタオが警察に捕まってチンチュンが引き取りに行っている間に相続書は盗まれてしまう。それに気付いたタイナンはタオとともに、罠が仕掛けられたワイの屋敷に取り返しに向かったが・・・。

ラウ・カーリョンの数々の功績の中でも特筆されるのが自身の監督作『レディークンフー激闘拳』(80)において、ショウ・ブラザースでは"武侠影后"チェン・ペイペイ以来となる女武打星ベティ・ウェイを誕生させたことだ。
香港の貧しい家庭に父親が盲目で8人兄弟という環境で育ったベティは、ナイトクラブで踊っている所をチャン・チェの助監督だったウー・マに発見され、ショウ・ブラザースと6年契約を結ぶ。だがある時期には、ベティが12本の作品に出演しても給料はたったの6千HKドルであった。さらにチャン監督が男優を“寵愛”する監督だったため、べティは女優進出に理解のあるラウ・カーリョン監督作『少林皇帝拳』(79)に出演。この作品でべティの潜在能力に着目したカーリョンは、べティを女武打星として鍛え上げると、続く『〜激闘拳』でベティを“武術に秀でた若き叔母”として主役に抜擢。結果べティは、第一回香港電影金像奨の主演女優賞を受賞する。この栄誉を武器にベティはショウ・ブラザースの“女帝”モナ・フォンに昇給を申し出るが、チャン監督とは別の意味で男優優遇主義だったフォンはそれを却下。だが当時すでに台湾、シンガポール、アメリカの中華街などで支持層を獲得していたベティは「私にこれからもショウ・ブラザースの映画に出て欲しいのなら給料を上げて下さい!」と再びフォンに詰め寄り、遂に独裁で知られた“女帝”から昇給を勝ち取り、その後も"SBクイーン"として躍進を続けていくのである。
知野二郎(香港功夫映画評論家)
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