
南派少林拳のひとつである洪家拳の使い手でありながらも、ショウ・ブラザースで武師からスタートし、香港クンフー・アクション映画の代表監督となったラウ・カーリョン。彼が、中国武術で使われる槍、刀、三節棍など様々な伝統的な武器を使う“十八般武芸”の魅力を取り入れた作品である。今回は正当な少林クンフーではなく、神打、茅山、術士という、カルト的なクンフー一派を登場させて対決させながら、映画における武術アクションの面白さを十分に描き出している。
主演には、カーリョン自らが演じ、『少林寺三十六房』のリュー・チャーフィー、『レディークンフー激闘拳』のベティ・ウェイ、『新・少林寺三十六房』のシャオ・ホウ、『ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳』のラウ・カーウィン、そして『嵐を呼ぶドラゴン』のアレクサンダー・フー・シェンと豪華な顔ぶれが揃った。

清朝のリー総管は、雲南義和団の支部を設立しながらもそれを解散させて姿を消した十八般武芸と神打法力の達人レイ・クン(ラウ・カーリョン)を殺害するために、 義和団の暗殺組織・術士門や 神打の総壇、そしてレイ・クンの実弟で茅山の達人レイ・ヨン(ラウ・カーウィン)にレイ・クン暗殺を命じる。こうして術士門からティエ・ホウ(シャオ・ホウ)、神打から地壇(リュー・チャーフィー)、天壇のファン(べティ・ウェイ)ら刺客たちがそれぞれ広州へと向かう。今はユィと名乗る蒔き売りに姿を変えたレイ・クンを発見したファンは、 銃弾までもはね返す肉体を持った神打拳士を養成させようとして次々に死者を出したことを悲しんで義和団を解散させたレイ・クンの考えに同調。また、一門の命によりレイ・クン暗殺を遂行しようとしていたティエ・ホウが病に倒れ、それを優しく看病したレイ・クンに次第にティエ・ホウは心を開いていく。そんな3人に地壇、術士門の門主らが次々と闘いを挑んできた。

『秘技・十八武芸拳法』は、ラウ・カーリョンのクンフー映画作品の中でも集大成的な作品であると同時に、香港映画史においても象徴的な作品となっている。ストーリーは神打や茅山を崇拝する義和団のまやかしを痛烈に皮肉り、そこから逃走した術士と刺客たちの闘いを描いている。監督デビュー作の『マジッククンフー神打拳』でも神打を題材として扱い、これまた皮肉りコメディ・クンフーの礎を築いているが、今回、原題が「十八般武藝」というだけあって、様々な武器やシチュエーションを用いて、全篇で繰り広げられるアクション・シーンの数々はとてつもなく高度なレベルだ。幸運にも本作品を香港の映画館で見たが、次々と繰り広げられるアクションに、現地の観客たちは興奮し、劇中で紹介される武器のテロップが画面に映し出されると、それを全員で読み上げていたのを記憶している。この作品が製作された1982年は香港映画界の一大転換期でもあって、香港ニュー・シネマの台頭を始め、香港現代アクションのパイオニアとなる『悪漢探偵』の誕生、そしてジャッキー・チェンさえも脱クンフーを唱えた『ドラゴンロード』を発表し、時代は完全に移り変わろうとしていた。この年の興行収入第9位と健闘しているものの、他のニュー・シネマやリアル・クンフーを描いた『少林寺』の大ヒットにより、かつてニュー・クンフー映画で革命を起こしたカーリョンも、時代の波には勝てなかった。だが、クンフー映画時代の終焉を飾るに相応しい見事な幕引きをした傑作であると同時に、カーリョン自身の最高峰のアクションを我々に堪能させてくれている。
中田圭(映画監督)
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