
ツイ・ハークの『ワンス・アポン・ア・タイム 天地大乱』に多大な影響を与えている、クンフー・アクション作品。今もクンフー・スターとして活躍のリュー・チャーフィーが、再び黄飛鴻[ホアン・フェイホン]を熱演。友人の武館と対立する武館の争いを解決していく。監督は、『セブンソード』(05)で俳優として老齢ながらも華麗なアクションを見せていたラウ・カーリョン。『少林寺三十六房』のラウ・カーリョン、チン・チュウ、シャオ・ホウの黄金チームが武術指導を手がけている。共演は、『レディ・スクワット』シリーズのベティ・ウェイ、『英雄十三傑』のクー・フェン、『少林寺列伝』のワン・ロンウェイ。ド派手な獅子舞い合戦バトルや狭い路地を使った対決等、見所満載の作品である。

広東では武館が乱立し、特にチェン道場主の天壽武館とルー道場主の正甫武館は最悪の関係だった。その両者を黄麒英[ホアン・チーイン](クー・フェン)が間に入り和解させようとするが、一向に収まらない。ついに春節の獅子舞い大会で乱闘となり、天壽武館は2年間の出場停止となってしまう。一方、黄飛鴻[ホアン・フェイホン](リュー・チャーフィー)は天壽武館のワンと遊び仲間だが、クンフーの技を競うために、フェイホンは道場仲間のマイ(シャオ・ホウ)に、ワンは妹のチィーイン(ベティ・ウェイ)に頼んで、賄賂で勝たせてくれる相手を探す。そして両者が見つけた相手は北からやってきたシャン(ワン・ロンウェイ)だった。だが、強いうえにワンが怪我をしてしまう。シャンは正甫武館のルーと兄弟弟子関係にあり、南派武術と交流するためにやってたのだった。それを知ったルーは、フェイホンや正甫武館をつぶすために、シャンを利用して罠を仕掛ける…。

“洪拳宗師”ラウ・カーリョンの数多くの監督作品の中でもベストファイトを誇るのが、本作『〜武館激闘』だ。まず、映画の冒頭で監督自身が語る、黄飛鴻にとっての洪家拳ともう一つの象徴である獅子舞の基本ルール。実はこれには重要な意味がある。カーリョンの実父ラウ・チャンの師は言うまでもなく黄飛鴻の弟子・林世榮だが、林世榮自身は獅子舞が得意でなく、逆にラウ・チャンの方が弟子入り以前から、習得していた蔡李佛拳と共に獅子舞の名手として知られていた。そのためラウ家の獅子舞は、黄飛鴻直系の洪家拳と共に代々受け継がれ、『ヤング・マスター師弟出馬』(80)では、カーリョンの甥ラウ・カーユンがジャッキー・チェンのダブルで獅子舞シーンを担当しているほどだ。
この『〜武館激闘』でまさに圧巻なのが、映画のクライマックスでのリュー・チャーフィー扮する黄飛鴻とワン・ロンウェイ扮する単雄の狭い路地裏での大決闘だ。前作『〜英雄少林拳』(76)から武道家として格段の成長を遂げた黄飛鴻と、北精武門からやって来た豪快な北派腿功を誇る単雄が互いに激しく闘いながら「五枚師祖による洪家拳最古の拳、それがこの鉄線拳だ!」「鉄線拳?その拳こそまさに洪拳の誇りだな!」と熱く言葉を交わし合い、やがて2人は何度となく技を打ち合ううちに、次第にお互いを武道家として認め合っていくのだ。この武道家同士の壮絶な闘いを経て、初めて生まれる感動的な“武徳の心”こそ、ラウ・カーリョンの黄飛鴻映画共通のテーマであり、その素晴らしい武打シーンと共に、我々の心に強烈なメッセージとして深く刻み込まれるのである。
知野二郎(香港功夫映画評論家)
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