解説

クンフー映画で最も人気のあるキャラクターである“広東の英雄”黄飛鴻[ホアン・フェイホン]。『酔拳』でジャッキー・チェン、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズでジェット・リーが演じたこのキャラクターを、『少林寺三十六房』で知られるリュー・チャーフィーが初主演でこのキャラクターを演じて、その後人気クンフー・スターとなるきっかけとなった記念すべき作品である。実在した黄飛鴻の武術“洪家拳”を継承する監督のラウ・カーリョンによって作りあげられた本作のアクションはまさにリアル・クンフーの極である。共演は、『嵐を呼ぶドラゴン』のチェン・クアンタイ、『霊幻少林拳』のワン・ユー。『Mr.Boo』のリッキー・ホイも端役で出演している。

ストーリー

広東五虎と呼ばれる武術家・黄麒英[ホアン・チーイン]の門弟であるリン(ワン・ユー)道場では 、近々行われる武館対抗の搶花炮大会のために、練習に余念がない。チーインの一人息子で17歳になる黄飛鴻[ホアン・フェイホン](リュー・チャーフィー)は、大会に出場したいものの、武術ができないので相手にされない。どうしても出たいフェイホンは、大会の日、密かに参加するが、対立する道場の連中に見つかり、彼をかばったリンがが重傷を負ってしまう。自分の非力さにくやしさを込み上げたフェイホンは、父のもとを訪れていた刑事のユエン叔父(ラウ・カーウィン)の紹介で、父の師匠である陸阿采[ルー・アーツァイ](チェン・クアンタイ)に弟子入りする。だが、修行中にユエンが追っていた盗賊のチェン・アルフー(ラウ・カーリョン)に殺害されたことを知るが、復讐の心を胸にしまい、過酷な修行を開始した…。

黄飛鴻と映画のかかわり

この映画ではじめて主演するリュー・チャーフィーが演じている黄飛鴻=ホアン・フェイホンは、広東語発音ウォン・フェイホンのほうで知られているだろう、19世紀後半から20世紀にかけて実在した広東地方の英雄である。

<宝芝林>という医局を広州にひらき、何人もの有名な弟子にそだてた、その英雄ぶりは、ツイ・ハーク監督、ジェット・リー主演の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ3作(91〜93年)で日本でもよく知られることとなった。

元祖黄飛鴻シリーズは、49年にはじまったクワン・タクヒン主演のものだ。すくなくとも77作がつくられたといわれ、同じ俳優によるシリーズとしては映画史上最長最大のものとしてギネス・ブックにものった。本物の黄飛鴻の孫弟子たちが、実話をもとに原作をかいたり、武術を演じたりしたこのシリーズは、香港クンフー映画の、まさに源流となった。その孫弟子の一人ラウ・チャンの息子が、この『〜英雄少林拳』の監督・武術指導をつとめ出演しているラウ・カーリョンである。

元祖シリーズにもかかわっていたラウ・カーリョンは、元祖とはちがう新味を出そうとしたのだろう。まだクンフーの鍛練をつむまえの少年時代(一書によれば17歳)のフェイホンを登場させ、その修行の日々をえがいた。

ジャッキー・チェンがわかき日のフェイホンを演じた『ドランクモンキー酔拳』(79)は、この3年後の作品である。

宇田川幸洋(映画評論家)

2006年3月8日発売!

ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳

陸阿采與黄飛鴻
Challenge Of The Masters

1976年香港
監督:ラウ・カーリョン
出演:リュー・チャーフィー、チェン・クアンタイ
特典:オリジナル劇場予告編、フィルムギャラリー
KIBF2542/ COLOR/本編92分/片面1層/16:9LBスコープサイズ/音声2:1.北京語2.広東語/字幕1:日本語