
中国史においてその名が知られる司馬遷[しばせん]が書いた中国古代歴史書「史記」。そのなかに書かれてある「刺客列伝」の一篇である春秋戦国時代に生きた聶政[じょうせい]の、暗殺と自身の壮絶な最期を脚色化した作品である。 武侠アクションの巨匠チャン・チェ監督と“天皇巨星”ジミー・ウォングのコンビが『片腕必殺剣』の大ヒット後に手がけた歴史悲劇ドラマで、 チャン・チェ作品で描かれる〈男の死の美学〉の原形ともいうべき作品であり、クライマックスの暗殺と壮絶な最期と遂げる姿は、香港映画史に残るシーンである。

魏の聶政[じょうせい](ジミー・ウォング)は、抗秦の義が集う道場の剣士。ある日、同じ道場の徐軾[じょしょく](チャン・ペイシャン)が、想いを寄せる夏嬰[かえい](チァオ・チァオ)にちょっかいを出していたことをとがめたことをきっかけに、それを恨んだ徐軾は役所に道場が反政府であると密告し、師匠と仲間が殺される。生き残った聶政は徐軾を殺害し、母と姉とともに齊に逃れ、食肉業となって身を隠していた。その頃、韓の烈侯に重んじられていた濮陽の嚴仲子[げんちゅうし](ティエン・ファン)は、宰相の韓傀[かんかい](ホアン・ツンシュン)と政策で対立し、韓傀に謀殺されそうになる。亡命した嚴仲子は、この仇を討ってもらうために、以前より耳にしていた聶政を探し出し、韓傀の暗殺を頼んだ。平凡な日々より剣士として生きる道を選んだ聶政は、争いを好まない母親の死後に嚴仲子と再度会い、暗殺を引き受ける。そして暗殺者となって単身、韓へ乗り込んでいく。

チャン・チェ監督の時代劇中、おどろくほどの異色の作である。いま、わざわざ「時代劇」と書いたのは、これが「武侠映画」ではないからだ。司馬遷の「史記」の<刺客列伝>に材をとった、本格的な歴史劇といえる風格をもった意欲作なのだ。文芸映画といってもいいような雰囲気もある。日本の時代劇でいえば、熊谷久虎監督の『阿部一族』(38)みたいな感じさえある。
主演のジミー・ウォングも、ただのアクション・ヒーローではなく、いつか歴史に名をのこすようなことをしたいと青春の血気に燃えつつも、市井のかたすみで悶々と日をくらす、古代中国の青年という役を熱演している。
前作の『片腕必殺剣』(67)では、香港映画にはじめて手持ちキャメラを導入し、ダイナミックなアクションで空前のヒットをとばしたチャン・チェ監督だが、ここでは逆に、キャメラはほぼすべて固定され、フェイ・ムー(費穆)監督『孔夫子』(40/未)のキャメラワークを参考に、ロー・アングル、40ミリ・レンズによる撮影という<静>の要素を重視した、と自ら語っている。フェイ・ムーは中国映画史上のベスト・ワンとされることが多い『田舎町の春(小城之春)』(48)で知られる、文芸映画の巨匠である。
とはいっても、この映画には、アクション場面もふんだんにあり、特に最後の血まみれ、死にものぐるいの大殺陣は、以後ティ・ロンやデビッド・チャンがくりかえし演じる悶死の美学の原形をつくってもいる。
宇田川幸洋(映画評論家)
■06-8-18 NEW!!
ヒーロークンフー特集
■06-8-18 NEW!!
ショウブラ列伝 vol.7
■06-7-18
コミカルクンフー特集
■06-6-21
特選クンフー・シリーズ特集
■06-6-21
ショウブラ列伝 vol.6
■06-5-18
巨匠ラウ・カーリョン作品パート3特集
■06-4-17
巨匠ラウ・カーリョン作品パート2特集
■06-4-17
ショウブラ列伝 vol.5
■06-3-20
巨匠ラウ・カーリョン作品パート1特集
■06-2-20
少林クンフー・パート3特集
■06-2-20
ショウブラ列伝 vol.4
■06-1-20
少林クンフー・パート2特集
■05-12-29
ショウブラ、特典第4弾
■05-12-15
ショウブラ列伝 vol.3
■05-12-15
少林クンフー・パート1特集
■05-11-17
ショウブラ、特典第3弾
■05-11-17
2大傑作クンフー特集
■05-10-25
第弐期発売記念プレゼント
■05-10-25
ショウブラ、特典第2弾
■05-10-15
ジミーウォング傑作アクション特集
■05-09-20
片腕必殺剣シリーズ特集
■05-09-20
ショウブラ特集サイトOPEN