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日本ではブルース・リーに続き、『片腕ドラゴン』(72)でその名が知られることとなったジミー・ウォング。映画ファンの間ではジミーさんと[さん]付けで呼ばれているスターであるが、彼ほどいろんな意味で有名なスターはなかなかいない。
“天皇巨星”と呼ばれた彼は、香港・台湾映画界のビッグブラザーであり、かのジャッキー・チェンも頭があがらないほどである。そんな彼は“東洋のハリウッド”と呼ばれたショウ・ブラザースの代表的なスターであった。この会社の社長でプロデューサーであったランラン・ショウが女優を中心に映画を作っていた1960年代、その状況を打破した作品がジミーさん主演の『片腕必殺剣』であった。この作品によってショウ・ブラザース映画は男性アクションを中心にした作品、人気男優を多く輩出していった。だが、スーパースターとなったジミーさんにとってのショウ・ブラ時代は満足いくものではなかったようだ。
1943年3月18日中国江蘇省無錫市に生まれ、上海で6つの工場を持っていたという裕福な家の出身である彼は、高校時代は水泳選手として活躍し、香港の大学に進学すると水泳選手として当時の自由形での香港記録を持つほどの活躍をしていた。時には水球でもキャプテンとして活躍していたが、水球の公式戦の最中、相手方の挑発に乗って乱闘騒動を起して出場停止処分となり、これがきっかけで謹慎中にたまたま新聞に出ていたショウ・ブラザースの俳優オーディションを受けて合格したのであった。64年にチャン・チェ監督の『虎侠殲仇』(未)で映画デビューを飾り、何本かアクション作品に出演するものの、ギャラは1ヶ月のガソリン代よりも安く、スターとは名ばかりの生活だったと本人は語っていた。(ただ、女優にはすごくもてていたそうで、撮影が終わると共演した女優に、「車に乗せて帰って♪」とよく言われていたそうだ。)

67年『片腕必殺剣』が大ヒットすると、それまでの状況が一変し、会社へ強い発言ができるようになる。そして、自分のアイディアを映画化したいと直訴して作られたのが、『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』(70)であった。この作品は香港で100万人を動員するというスーパーヒットを記録し、彼は頂点を極めた。だが、ショウ・ブラザースとの7年間の契約が終了とともに、プロダクションマネージャーであったレイモンド・チョウが設立したゴールデン・ハーベスト社に移籍する。ショウ・ブラにおいて俳優の窓口となっていたレイモンド・チョウは、俳優たちに絶大な信頼があり、ギャラの支払など、俳優たちのことをちゃんと考えていた。だからこそ、彼に誘われた時に移籍したと、 ジミーさんは語っていた。
70年代に入り、ゴールデン・ハーベストを皮切りに、移り住んだ台湾での映画製作、傷害事件等で明るみに出た黒社会との関係、そして香港・台湾映画界での暗躍と、スターらしからぬ違う顔も見せていたジミーさん。90年代の中頃までは映画との関わりを持っていたが、今では実業家として活躍し、結婚した3人の娘たちの孫たちと会うのを楽しみにしているおじいちゃんでもある。そんなジミーさんは、どんな立場の人間であっても古くからの友人を大事にし、曲がったことやいいかげんな人間は大嫌い。男気ある仁侠的な精神を持っていたからこそ、“天皇巨星”という言葉が似会うスターだったのだろうと感じるのであった。
筒井修(映画宣伝プロデューサー)

| 1967年 | 『片腕必殺剣』『大刺客』 |
| 1968年 | 『大女侠』 |
| 1969年 | 『続・片腕必殺剣』 |
| 1970年 | 『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』 |
| 1971年 | 『新座頭市 破れ!唐人剣』『戦国水滸伝 嵐を呼ぶ必殺剣』 『ドラゴン武芸帖』 |
| 1972年 | 『片腕ドラゴン』『ドラゴン覇王拳』『ドラゴン覇王拳2復讐の挽歌』 |
| 1973年 | 『ドラゴン対不死身の妖婆』『いれずみドラゴン 嵐の血斗』 |
| 1974年 | 『怒れるドラゴン 不死身の四天王』 |
| 1975年 | 『スカイ・ハイ』 |
| 1976年 | 『片腕カンフー対空とぶギロチン』『ドラゴン修行房』 『キラー・ドラゴン流星拳』 |
| 1982年 | 『ドラゴン特攻隊』 |
| 1984年 | 『上海13』 |
| 1986年 | 『上海エクスプレス』 |
| 1990年 | 『炎の大捜査線』 |
| 1992年 | 『ジョイ・ウォンの妖女伝説』 |
| 1993年 | 『極東黒社会』 |
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