「邵氏兄弟有限公司」の誕生

1950年代から、上海の実業家ショウ家に生まれた10人兄弟の末弟ランラン・ショウ(邵逸夫)は、三男ラミー・ショウ(邵仁枚)とともに東南アジア地域で映画を撮影し始めた。「白蛇伝」「梁山伯」「孟姜女」といった中国民話をテーマにした作品が地方の観客の人気となり、彼らの映画ビジネスにおける才能が開花する。

そして1958年、製作した映画の収益で蓄えた資産を元手に、2人はショウ・ブラザース(邵氏兄弟有限公司)を設立する。当時のライバル会社キャセイ・オーガニゼーションとの熾烈な争いに勝利したショウ・ブラザースは、1965年に“邵氏影城”と呼ばれた東洋一の巨大スタジオを建設し、香港映画の黄金時代を築き上げていくのである。

“東洋のハリウッド”と称された黄金時代

ショウ・ブラザースは、日本映画界から監督やカメラマンを招聘、積極的にその知識・技術を吸収し、自社製作作品に取り入れていく。また「南國實験劇團」という俳優訓練所の設立、“ショウ・スコープ”と呼ばれるシネマ・スコープの開発、北京語と英語による二段字幕の使用など、独自の企画も次々と打ち出していった。

しかし、ショウ・ブラザース一連作品の高いクオリティを支えたのは、ランラン・ショウの完全主義に他ならない。ランラン・ショウは1年で900本のフィルムを見るという記録を作るほど映画を愛し、同時に映画に対して厳しい目を持っていた。彼は毎朝9時にオフィスに着くと、監督が前日に撮影したラッシュを総チェックし、求める基準に達していないフィルムはすべて焼却した。その結果、ショウ・ブラザース作品は多くの観客から支持され、興行的に大ヒットを記録。また世界の映画祭でも数々の賞を受けるに至った。

ここで、60年代末〜70年代のショウ・ブラザース黄金時代を支えた監督達を紹介しよう。リー・ハンシャン(李翰祥)は、『梁山伯興祝英台』(未)『傾国傾城』(未)『江山美人』などの代表作で、宮廷時代の衣装による狂言、伝統的な中国歌劇をモチーフに、官能的な大人の映画を製作した。

“香港の黒澤明”といわれるキン・フー(胡金銓)は、『大酔侠』のような武侠映画や武道叙事詩で、ハイレベルな作品を発表し、それらの作品を「第八芸術」と銘打って、中国古典芸術、北京オペラ、絵画表現主義を一体化させた。

チャン・チェ(張徹)は、血にまみれた武侠作品群によって、香港でのアクション映画の基礎を築いた監督である。『片腕必殺剣』『報仇』『ブラッド・ブラザース/刺馬』などの代表作で、勇敢な男達の絆と友情を徹底的に掘り下げ、テイ・ロン(狄龍)、デビッド・チャン(姜大衛)、ダニー・リー(李修賢)らの看板スターとともに、ショウ・ブラザースの隆盛期を支えた。また彼の元で助監督を務めたジョン・ウーが、チャン・チェ作品から“男の美学”を学んだことはよく知られている。

ラウ・カーリョン(劉家良)は、クンフー映画の武術スタイルと共にアクション映画におけるスタイルを定着させた。『少林寺三十六房』『少林寺VS忍者』のような中国武侠芸術のリアルな描写で、力と美を同時に表現し、映画のジャンルにおける新たな波となった。

チュー・ユアン(楚原)は、質と量、両方を産出する良い実例となる監督である。彼のフィルモグラフィーから古典のジャンルに焦点を当てると、彼はその後、クー・ロン(古龍)の小説の複雑な構成を優れた映画美学で表現するという彼の夢を結合することによって、『流星胡蝶剣』のような古典の香港武道映画の中で新しい水準を確立した。

バリー・ウォン(王晶)は、『賭術』(未)や『追女仔』(未)などで、登場人物の心理戦を鋭敏に描いた。彼はマーケットに機敏な感覚を持ち、『花火大少』(未)や『千王鬥千霸』(未)などの作品で新しい挑戦を繰り返した。

ショウ・ブラザースが残した偉大なる足跡

70年代には、新興勢力のゴールデン・ハーベストが台頭し、帝王ショウ・ブラザースを激しく追い上げる。ゴールデン・ハーベストと契約したブルース・リー、ジャッキー・チェンの爆発的人気により、ショウ・ブラザースの威光も徐々に翳りを見せ始める。85年にはラミー・ショウが死去、撮影所も活動を停止し、香港映画界に君臨した一大帝国も、事実上の終焉を迎えることとなった。

ショウ・ブラザースから生まれた多くの映画は、社会風刺、青春映画、警官と強盗、シチュエーションコメディ、歴史上の叙事詩、官能映画、ホラー、サスペンスのように、無数のジャンル、スタイルを確立し、それは現在に至るまで世界の映画界に多大な影響を及ぼしている。

またショウ・ブラザース映画からは、今でも現役として活躍する多くのスターが輩出されている。リン・ダイ(林黛)、ロー・ティ(樂帯)、チャオ・レイ(趙雷)、チェン・ホウ(陳厚)、ジミー・ウォング(王羽)、チェン・ペイペイ(鄭佩佩)、テイ・ロン(狄龍)、アレクサンダー・フーシェン(傅聲)、デビッド・チャン(姜大衛)、ロー・リエ(羅烈)、ダニー・リー(李修賢)、チェン・カンタイ(陳觀泰)、チョウ・ユンファ(周潤發)、リュー・チャーフィー(劉家輝)、ジェット・リー(李連杰)、アンディ・ラウ(劉徳華)、チャウ・シンチー(周星馳)、金城武、レスリー・チャン(張國榮)、アニタ・ムイ(梅艶芳)、ミシェル・リー(李嘉欣)、マギー・チャン(張曼玉)など、きら星のごときスターは数え上げたらきりがない。